木下和彦 教授(ネットワーク・システム制御研究室)

インテリジェントネットワーキング

Q.木下先生が取り組まれているインテリジェントネットワーキングとはどういう意味ですか??

A.直訳すれば“知的網構築”ということになりますが,とにかく複数のモノを接続していかに高い付加価値を効率よく与えるかということを考えて,ネットワークについて幅広く研究しています.

Q.ネットワークって十分便利になってもう研究することないような気がするんですけど…

A.よく言われます(笑).でも,まだまだ世の中にはつながっていないモノがたくさんあるので,これらをつないで新しいネットワークを構築することで,これまでにない機能やサービスが提供されるようになりますよ.M2M(Machine-to-Machine)やIoT(Internet of Things),あるいはIoE(Internet of Everything)などと呼ばれています.

Q.具体的には何ができるようになるんですか?

A.例えば,地震や火山噴火予知などのために地中や深海のような人間が簡単には行けない場所を調査したいときに,指先ほどの大きさの無線通信機能付きセンサーを適当にばら撒くと,勝手にネットワークを構築して色々なデータを取ってきてくれたりします.持って行くのさえ難しいところなら,ドローンを飛ばすとかもアリですね.この場合も,1機で行くんじゃなくて,編隊組んでネットワークを作って情報交換しながら目的の場所を目指す感じになります.

Q.なるほど.技術的にはどういう点が難しいんでしょうか.

A.まず,接続される端末の数が膨大になります.これまでのネットワークでは,電話にしてもWWWアクセスにしても最終的には人間が通信するので,人口と同じオーダーでしたが,機械同士が通信するとなると文字通り桁違いで,兆とか京とかのオーダーになると言われています.次に,基本的には全ての通信が無線で行われるのですが,有線と比較して低速・高エラー率なので,経路制御やスケジューリングを工夫しないと実用的な品質になりません.「今でも携帯とかWiFiとか普通に使えてるのでは?」と思うかもしれませんけど,これらは端末から基地局・アクセスポイントまでの「最後の一歩」だけが無線なんですね.これに対して,M2M/IoTでは無線でリレーすることになります(無線マルチホップネットワーク).そうすると,電波干渉の影響が大きくなったり,端末間の距離(ホップ数)に左右されたりと,考慮しないといけない要素が大幅に増えます(図参照).あと,端末の機能・性能差が大きい点も制御を難しくしますね.


 有線ネットワーク

 


 無線マルチホップネットワーク

Q.「数が膨大」というと最近“ビッグデータ”という言葉をよく聞きますが,関係あるんですか?

A.ありますね.ビッグデータは膨大な量のデータを解析してその傾向や特徴を抽出して,何らかの応用につなげるという技術ですが,そもそもそのデータをどこから取ってくるのか,どうやって運ぶのかといったところで,無線マルチホップネットワークが活躍します.

枯渇する周波数資源

Q.木下先生はどういうアプローチで研究されてるんですか?

A.まずは動的周波数割り当てですね.そもそも,スマフォの普及や無線LANの増加などで周波数資源が枯渇しています.有線なら,容量が足りなくなってきたら新しいケーブルを敷設するという対応ができますが,無線はそういう訳にいかないので,限られた資源である周波数を有効に使う必要があります.そこで,これまでは各システムに固定的に割り当てられている周波数を,状況に応じて動的に割り当てることで利用効率を高めようとしています.

Q.それって電波法違反なのでは?

A.現時点ではそうですが,周波数資源の枯渇は世界的な問題で,各国が法改正を検討している状況です.この研究の成果でその流れを加速させたいと思っています.

Q.「まず」とのことでしたが,他にもあるんですか?

はい.あとは経路制御,バッファ制御,転送スケジューリング等の古典的な要素技術ですが,有線ネットワークの場合とは条件が全く違うので,古くて新しい問題ということになります.

そしてヒューマンネットワーク

Q.最後に,ネットワークを研究する面白さを聞かせてください.

A.研究は何でも面白いと思います(笑).ただ,ネットワークはつないで付加価値を生み出すという性質上,幅広い知識が要求されますが,結局のところそれぞれの専門家には敵わないので,必然的に多くの人と協力して進めることが多くなります.色々な知識や考え方が得られて楽しいですよ. ヒューマンネットワークが重要です…ということで,きれいにまとまりましたね(笑).